上五・中七・座五

 俳句とは何か?のページで述べたとおり、俳句は五・七・五音で作ります。
 まず、次の私の句を見てください。

  朝凪の海を拝みて杖拾ふ (凡茶)
  
  あさなぎの(五)/うみをおがみて(七)/つえひろう(五)
  朝凪=夏の季語

 たしかに、五七五音になってますね。

 ここで、「あさなぎの」に当たる初めの五音を「上五」、「うみをおがみて」に当たる次の七音を「中七」、「つえひろう」に当たる最後の五音を「座五」、または「下五」と俳句では呼びます。
 先輩の俳人がたびたび使う用語です。
 覚えておきましょう。



≪おすすめ・俳句の本≫

佳句が生まれる「俳句の形」 凡茶
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 さて、俳句には、読者の心に響く美しい形というものがいくつか存在します。

 例えば、次の名句は、いずれも中七の後ろを「けり」で切り、座五に名詞を据える形をしています。

  ●凩(こがらし)の果(はて)はありけり海の音(言水)
  ●ひた急ぐ犬に会ひけり木の芽道(中村草田男)

 また、次の名句は、いずれも名詞で上五の後ろを切り、句末は活用語の終止形で結ぶ形をしています。 

  ●芋の露連山影を正しうす(飯田蛇笏)
  ●秋の暮大魚の骨を海が引く(西東三鬼)

 筆者(凡茶)も、名句の鑑賞を通じて、このような美しい俳句の形を使いこなせるようになることで、次のような自信作を詠むことができました。

  ●糸取りの祖母逝きにけり雪解雨(凡茶)
  ●露の玉工場ドスンと始まりぬ(凡茶)

 この本は、こうした佳句の生まれやすい美しい俳句の形を、読者の皆様に習得していただくことを目的としています。

 なお、この本は、前著『書いて覚える俳句の形 縦書き版/横書き版』(既に販売終了)を、書き込み型テキストから「純粋な読み物」に改め、気軽に楽しめる形に書き変えて上梓したものです。

 あちこち加筆・修正はしてあるものの、内容は重複する部分が多いので、すでに前著『書いて覚える俳句の形』をお持ちの方は、本著の新たな購入に際しては慎重に検討してください


●Kindle本について

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 あるいは、紙のように読めて目に優しく、使い勝手も良い、Kindle専用の電子書籍リーダーで、快適に読むことも出来ます。

  

   





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俳句における小さな「ゃ・ゅ・ょ・っ」や長音符「ー」について

 俳句とは何か?のページで、俳句とは季語を入れた五・七・五音の短い詩であると書きました。

 ここで、あえて五七五字ではなく、五七五音としたのは、俳句の五七五は「字の数」ではなく、「音の数」を数えたものだからです。
 例えば「チョコレートパフェ」は字数では九字ですが、音数ではチョ・コ・レ・ー・ト・パ・フェの七音となります。

 初心者の間違えやすいところですので、ここできちんと述べておきましょう。


一.小さな「ゃゅょ」は前の字と合わせて一音

 小さな「ゃゅょ」はそれだけでは一音となりません。
 前の字と合わせて一音となります。
 次の私の俳句を見てください。

  朱の点となりし気球や雪だるま (凡茶)

 この俳句を平仮名に直すと、六・八・五字になりますが、「しゅ」と「きゅ」は一音として数えるので、定型がきちんと守られています。

  しゅ/の/て/ん/と(五音)
  な/り/し/き/きゅ/う/や(七音)
  ゆ/き/だ/る/ま(五音)



二.小さな「ァィゥェォ」も前の字と合わせて一音

 小さな「ゃゅょ」と同様に、小さな「ァィゥェォ」も前の字と合わせて一音となります。
 ですから「カフェオレ」は五字で表記されますが、小さな「ェ」はそれだけで一音とはならず、前の「フ」の字と合わせ「フェ」で一音となりますので、この単語は四音です。

  カフェオレや窓に雪だるまの背中 (凡茶)



三.小さな「っ」はそれだけで一音

 小さな「ゃゅょ」や「ァィゥェォ」とは異なり、小さな「っ」はそれだけで一音となります。
 ですから、次の句は五七五音の定型をしっかり守っています。

  パレットに恐竜の色涼新た (凡茶)

  パ/レ/ッ/ト/に(五音)
  きょ/う/りゅ/う/の/い/ろ(七音)
  りょ/う/あ/ら/た(五音)



四.音を伸ばす「ー」(長音符)も一音

 音を伸ばす「ー」(長音符)も、それだけで一音となります。
 ですから次の俳句の「オルゴール」は五音の単語となります。

  桜貝納めて贈るオルゴール (凡茶)
  

 以上、俳句を始めて間もない頃の私が、はじめて直面した疑問について、書いてみました。
 参考にしてください。


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 また、次の名句は、いずれも名詞で上五の後ろを切り、句末は活用語の終止形で結ぶ形をしています。 

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≪おすすめ歳時記(初心者向け)≫

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 合本俳句歳時記は、持ち運びに便利なサイズで、値段も手頃なのに、春夏秋冬・新年、全ての季節の季語が掲載されています。

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 踏青(春の季語)、薄暑(夏の季語)などそれまで知らなかった言葉や、髪洗ふ(夏の季語)、木の葉髪(冬の季語)など意外な季語と出会うことができ、毎晩、夢中になってページをめくったことを覚えています。

 当時の私が買ったのは第二版でしたが、左の『合本俳句歳時記・第四版』は、季語の解説や掲載されている類語がさらに充実し、初心者にも上級者にもお薦めです。
 これから俳句に誘ってみようと思っているお友達へのプレゼントにも最適です。



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 私は、愛蔵版が出る前の全5巻を持っているのですが、この歳時記のおかげで俳人としてスキルアップし、かつ、日本の風土と文化の素晴らしさを再確認することができました。
 この歳時記は、私の俳句生活におけるかけがえのないパートナーであり、大切な財産でもあります。



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posted by 凡茶 at 00:56 | Comment(0) | 俳句の定型について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする


字余りの俳句

 俳句は五・七・五音で作るのが原則です。
 この五・七・五音より、一句に含まれる音の数が多くなることを「字余り」と言います。

 次の俳句は私の自信作です。

  杖置いて朝凪の海拝みけり (凡茶)

 この句を、五・七・五の定型ではなく、あえて六・七・五や、五・八・五で表現してみます。

  【六・七・五】 杖を置いて/朝凪の海/拝みけり
  【五・八・五】 杖置いて/朝凪の海を/拝みけり

 口に出して読んでみると、随分、リズムが悪くなったとわかります。
 俳句は散文ではなく、韻文です。
 リズムが悪くては、俳句ではありません。

 古くから和歌などの韻文で用いられてきた五七五音は、耳にすんなり入ってくる美しい調べを持っています。
 この調べを、安易に壊してはなりません。
 ですから、字余りはできるだけ避けるようにしましょう。
 私も初心の頃は、一句に言いたいことをいろいろ詰め込もうとして、字余りの句を作ってしまうことがありましたが、結局気に入らず、捨てることになりました。

 ただし、字余りの俳句が全て悪いというわけではありません。
 五七五音の定型を守った俳句を読むように、自然に、心地よいリズムで読むことができれば字余りも気になりません。
 次の私の俳句を読んでみてください。

  缶コーヒーポケットに挿し鮪糶る (凡茶)

 次に示すように、この俳句は六・七・五音の字余りですが、読んでみて耳障りにはなっていないと思います。

  かんこーひー(六音)/ぽけっとにさし(七音)/まぐろせる(五音)

 なぜこの句は、字余りなのに、すんなりと耳に入ってくるのでしょうか?
 一つは、字余りの上五、いや上六において、軽く息をつぐ場所が、定型を守っている句と同じだからだと思います。
 つまり、軽く息をつぐ場所を「◆」であらわすと、上の句の「杖置いて」と、この句の「缶コーヒー」とでは、同じ場所に「◆」が入ります。

  つえ◆おい◆て
  かん◆こー◆ひー

 この「缶コーヒー」の句の字余りが気にならないもう一つの理由は、缶コーヒーという単語が、「ん」という「はねる音」(撥音)と、「ー」という「のばす音」(長音)を含んでいて、それ自体で心地よいリズムを持っているからだと思われます。

 長音に似た「ふう」と、撥音「せん」を含む次の俳句も、五・七・六の字余りが、それほど気にならないと思います。

  海風を入れて転がす紙風船 (凡茶)

 とにかく、字余りの俳句ができた場合は、それが定型と変わらない心地良い調べを持っているのか否か、何度も句を声に出して読み、確かめてみましょう。
 それで字余りが気にならなければいいですが、やはり聞き心地が悪い場合は、定型を守る方向で句を直す必要があると思います。



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 また、次の名句は、いずれも名詞で上五の後ろを切り、句末は活用語の終止形で結ぶ形をしています。 

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俳句の入口 〜作句の基本と楽しみ方 藤田湘子著
==============================
■ 俳句はリズムである… 大切なことを教えてくれた一冊です。


 左の本に出会うまでは、伝えたいこと、表現したいことを無理やり五七五の定型に詰め込むような俳句作りをしていました。

 つまり以前の私にとって、定型は約束事だから仕方なしに守る制約にすぎなかったのです。

 しかし、この本を読んで、俳句は韻文であり、大切なのはリズムであることを知ると、定型、切れ字等の大切さが少しずつわかるようになっていきました。

 「意味」から「音」へ!
 私の俳句に対する意識を大きく変えてくれた一冊です。



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字足らずの俳句

 「字余りの俳句」のページにも書きましたが、俳句は五・七・五音で作るのが原則です。
 それは、和歌などで古くから用いられてきた五七五音は、口に出してみると実に心地よいリズムを持っているからです。

 この五七五音の定型よりも少ない音数で作られた俳句を「字足らず」と言います。

 意味ばかりを重視して安易に作った字余りの俳句は、とても聞き心地が悪いものですが、字足らずの俳句のリズムの悪さは、その比ではありません。
 例を示してみましょう。
 次の俳句は、私のお気に入りの俳句です。

  暫くは猫を摩りて門火あと (凡茶)
      暫く=しばらく。 摩りて=さすりて。 門火=かどび。秋の季語。

 これをわざと字足らずの五・六・五音、五・七・四音にしたものが次です。

  【五・六・五】暫くは/猫摩りて/門火あと
  【五・七・四】暫くは/猫を摩りて/送り火

 口に出して見てください。
 リズムがすごく悪くなっていると思います。
 ですから、字足らずの俳句は、極力避けねばなりません。

 ただし、字足らずが気にならない例外はあります。
 それは「短日(たんじつ)」という季語を「日短(ひみじか)」という形で座五に置く場合です。
 次の俳句を読んでみてください。

  紙相撲塾に流行るや日短か (凡茶)

 ここで座五の日短かは四音ですが、「ひ_みじか」のように、「ひ」の字と「み」の字のあいだに「間(ま)」をとって五音のように読むことができるので、字足らずが気になりません。
 あるいは、「ひぃみじか」のように、「ひ」と「み」のあいだに、「い」に近い音を入れて、五音のように読むこともできます。
こうすると、短日らしいせわしなさが出て、面白い句になることがあります。

 この「日短か」の部分を「日の短か」あるいは「日短し」と表現することも出来ますので、自分の句に最もふさわしいのはどれか、何度も口に出して試してみると良いでしょう。



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