三段切れ(俳句の途中の二か所に切れが入ることについて)

■■ 初心者のうちは三段切れの俳句を作らない

 次の三つの俳句を見て下さい。
 どれも筆者の自信作です。

  新じやがや野風の先の田舎富士 (凡茶)

  薬屋に長話せり春隣 (凡茶)

  銀漢や砂場の山に旗一つ (凡茶)

 これらの句を、あえて「三段切れ」の俳句に作り変えてみます。

 「三段切れ」の俳句とは、句の途中の二か所に切れが入り、一句が三つの部分に分かれたような俳句のことをいいます。 
 「/」で切れの位置を示します。

  新じやがや/野風吹きたり/田舎富士

  薬屋や/長話せり/春隣

  銀漢や/砂場なる山/旗一つ
      銀漢=ぎんかん。天の川のこと。

 これらを声に出して読んでみて下さい。
 いずれの句もブツブツと断裂していて、元の俳句より読みづらくなっていることがおわかりいただけると思います。

 俳句はただでさえ短いので、それをさらに三つもの部分に切り刻んでしまうと、細かくちぎれた喉ごしの悪い蕎麦のようになってしまうことが多いのです。

 ですから、俳句を始めたばかりの頃は、三段切れの俳句は作らない方が無難でしょう。

 一句が出来上がり、もしそれが三段切れになっていたら、なるたけなおした方が良いでしょう。


■■ 三段切れの名句

 しかしながら、「三段切れ」は決して禁じ手ではありません。
 実際、過去には多くの俳人が三段切れの名句を生み出してきました。

 ここでは三段切れの俳句をいくつか見てみましょう。
 
 読者の皆さんも、俳句が上達したと自覚できた頃から、三段切れに挑戦してみて下さい。

● 三つの事物を並べた俳句

 次の三句は、異なる三つの事物を並べて、そこから生じてくる味を楽しもうとする三段切れの俳句です。

  目には青葉/山ほとゝぎす/はつ松魚 (山口素堂)
      はつ松魚=はつがつお

  梅/若菜/まりこの宿のとろゝ汁 (松尾芭蕉)
      まりこの宿=東海道の宿駅、鞠子宿のこと。当時、とろろ汁が名物であった。

  花曇/鉄の灰皿/固き椅子 (香西照雄)

 二句目は、これから東海道を旅する弟子の川井乙州に芭蕉が送った餞(はなむけ)の句です。

● 二つ部分が意味の上で一塊りをなす俳句

 次の二句は、三つのうちの二つの部分が形式的(文法的)には切れているものの、意味の上では一塊りをなしている三段切れの俳句です。

 一句目は、上五と中七が「子どもたちよ、昼顔が咲いたよ」という呼びかけ言葉として一つにまとまっています。
 二句目は中七と座五が一対の問答として、一つにまとまっています。

  子ども等よ/昼顔咲ぬ/瓜むかん (松尾芭蕉)
      咲ぬ=「さきぬ」と読む。

  初蝶来/何色と問ふ/黄と答ふ (高浜虚子)
      来=「く」と読む。

 ところで、筆者には三段切れの作品がなかったものかと、この記事を書くにあたり、古い俳句手帳をペラペラとめくってみました。
 すると、一句だけ三段切れの俳句が出てきました。

  呼ぶ鴉/答ふる鴉/花曇 (凡茶)
      鴉=カラス。

 この一句、今思うと、上五と中七が一対の呼応であり、意味の上での一塊りをなしているため、三段切れが気にならなかったのだと思っています。


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 さて、俳句には、読者の心に響く美しい形というものがいくつか存在します。

 例えば、次の名句は、いずれも中七の後ろを「けり」で切り、座五に名詞を据える形をしています。

  ●凩(こがらし)の果(はて)はありけり海の音(言水)
  ●ひた急ぐ犬に会ひけり木の芽道(中村草田男)

 また、次の名句は、いずれも名詞で上五の後ろを切り、句末は活用語の終止形で結ぶ形をしています。 

  ●芋の露連山影を正しうす(飯田蛇笏)
  ●秋の暮大魚の骨を海が引く(西東三鬼)

 筆者(凡茶)も、名句の鑑賞を通じて、このような美しい俳句の形を使いこなせるようになることで、次のような自信作を詠むことができました。

  ●糸取りの祖母逝きにけり雪解雨(凡茶)
  ●露の玉工場ドスンと始まりぬ(凡茶)

 この本は、こうした佳句の生まれやすい美しい俳句の形を、読者の皆様に習得していただくことを目的としています。

 なお、この本は、前著『書いて覚える俳句の形 縦書き版/横書き版』(既に販売終了)を、書き込み型テキストから「純粋な読み物」に改め、気軽に楽しめる形に書き変えて上梓したものです。

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タグ:三段切れ
posted by 凡茶 at 19:04 | Comment(0) | 俳句における切れ字の使い方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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