そこでは、句会に投句する俳句は、句会が開催される季節の季語を入れて詠んだものならば、他に制約・約束事は設けられないのが普通であるいうことを述べました。
そして、そのような自由な投句の方式を「当季雑詠(とうきざつえい)」と呼びます。
この当季雑詠に対し、あらかじめ用いるべき季語や言葉が決められていて、そのルールにしたがって作った俳句を持ち寄る方式を「兼題」といいます。
例えば梅雨時に行われる句会ならば、「梅雨」「蝸牛(カタツムリ)」「紫陽花(アジサイ)」などの季語が、よく兼題に選ばれます。
あるいは、「犬」「猫」「靴」「鏡」など、季語以外の言葉が兼題として選ばれることもあります。
次の二句は、おそらく私が始めて参加した兼題の句会に持っていった俳句だったと記憶しています(ずいぶん昔のことで、少し曖昧な記憶ですが…)。
この時の兼題は「雷」(かみなり・らい)でした。
豚積んでトラック雷をくぐりゆく (凡茶)
遠雷や病床の父髭を剃る (凡茶)
兼題で句会を行うことのメリットは二つあります。
一つは、句会までの数日間から数週間、兼題となった季語・言葉とじっくり向き合うことができるということです。
その季語や言葉を使って繰り返し俳句を作っているうちに、季語・言葉が深い所にかくし持っていたイメージ、季語・言葉の持つリズムや調べ、季語・言葉の持つ歴史などが見えてきて、とても勉強になります。
もう一つは、句会における選句の目を養うことができるということです。
兼題の場合、参加者はあらかじめ用いられる季語や言葉についてじっくり勉強し、例句などを味わい尽くしてから句会に臨みますから、俳句を鑑賞する能力が高まっています。
そのような状態で選句をすると、それまでには持てなかった視点で、句を冷静に、客観的に、適切に評価できるものです。
そういったわけで兼題の句会は、自らの俳句作りの実力を高めるのにとても役立ちます。
初心者の方は、できるだけ積極的に兼題の句会に参加しましょう。
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さて、俳句には、読者の心に響く美しい形というものがいくつか存在します。
例えば、次の名句は、いずれも中七の後ろを「けり」で切り、座五に名詞を据える形をしています。
●凩(こがらし)の果(はて)はありけり海の音(言水)
●ひた急ぐ犬に会ひけり木の芽道(中村草田男)
また、次の名句は、いずれも名詞で上五の後ろを切り、句末は活用語の終止形で結ぶ形をしています。
●芋の露連山影を正しうす(飯田蛇笏)
●秋の暮大魚の骨を海が引く(西東三鬼)
筆者(凡茶)も、名句の鑑賞を通じて、このような美しい俳句の形を使いこなせるようになることで、次のような自信作を詠むことができました。
●糸取りの祖母逝きにけり雪解雨(凡茶)
●露の玉工場ドスンと始まりぬ(凡茶)
この本は、こうした佳句の生まれやすい美しい俳句の形を、読者の皆様に習得していただくことを目的としています。
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