ここでは、一般的な句会の方法・進め方を、紹介したいと思います。
■ 投句
句会に参加する人は、会場に到着すると、まずは投句用紙を渡されます。
投句用紙は短冊状に切られており、参加者一人に対し、二〜三枚程度渡されるのが普通です。
その渡された枚数が、一人あたりの投句数となります。
投句用紙を渡された参加者は、あらかじめ作っておいた俳句を、投句用紙一枚につき一句、無記名で書き入れていきます。
その際、他の人が読んでもわかりやすいように、楷書で丁寧に書くことが重要です。
あまり達筆なのは困ります。
もし、他の人から欠席投句を預かっている場合は、その人の分も投句用紙を受け取り、代筆します。
持参した俳句をすべて投句用紙に記入したら、それを幹事さんに渡します。
これで投句は完了です。
なお、投句する俳句については、句会が催される季節の季語を入れて詠んだ俳句ならば、他に制約は設けられないのが一般的です。
このような投句の方式を「当季雑詠(とうきざつえい)」と呼びます。
これに対し、あらかじめ用いるべき季語や言葉が決められていて、そのルールに基づいて作った俳句を持ち寄る方式を「兼題」と呼びます。
また、当日、会場に着いてからお題が与えられ、その場で俳句をひねってから投句する方式として、「席題」や「袋回し」と呼ばれるものがあります。
「兼題」「席題」「袋回し」については、別のページで詳しく説明します。
■ 清記
全員の投句が済んだら、幹事さんは、誰から投句されたものかわからなくなるように投句用紙をよく混ぜ合わせ(シャッフルし)、参加者全員に配りなおします。
一人当たりに配られる枚数は、欠席投句が無ければ投句数と同じですが、欠席投句があった場合は、投句数より若干多くなります。
投句用紙の配りなおしが済んだら、次は清記用紙の記入になります。
普通、清記用紙には、「用紙番号」を記入する欄と、「俳句」を書き入れる欄が設けられています。
○「用紙番号」の記入
清記用紙には、その後の句会をスムーズに進行させるために、用紙番号を振ります。
普通は、俳句会の主宰者が「1」と声に出しながら、手元にある清記用紙に「1」と記入し、次に、その右側の席に座る人が「2」と声に出しながら、手元の清記用紙に「2」と記入します。
以降、同じ様にして、反時計回りに3、4、5…と番号を記入していきます。
○「俳句」の書き入れ
用紙番号の記入が終わったら、配られた投句用紙に書かれている俳句を、手元の清記用紙へ丁寧に書き写していきます。
この俳句の書き入れは、神経質なぐらい慎重に行い、誤字などの記入ミスを絶対しないように注意しましょう。
もし自分のミスで、他の人が一生懸命作った俳句が、選句の際に低い評価を受けてしまったら大変なことです。
丁寧に、丁寧に書き写しましょう。
ところで、配られた投句用紙に、明らかに誤字と思われるものが含まれている場合はどう対処したらよいのでしょうか。
実は、その場合は、ミスである可能性が高くても、投句用紙に記入されているままに俳句を書き写し、勝手に直したりしてはいけません。
自分がミスと思う箇所も、もしかしたら投句者が何らかの考えを持って、そのような表現を用いた場合もあるからです。
もし、それが本当にミスであった場合は、あとで述べる「選句」の際に、訂正が行われます。
■ 選句
選句とは、投句された全ての俳句の中から、自分の作品以外で良いと思うものを決められた数だけ選び出して投票することを言います。
以下、その手順を述べます。
まず、参加者は、自分の書いた清記用紙の中に気に入る俳句があれば、それを持参したノートや下書き用紙などに書き出します。
その際、用紙番号も書き出した俳句に添えて書いておきます。
その作業が済んだら、手元の清記用紙を左隣の人に渡し、右隣の人から次の清記用紙を受け取ります。
つまり、清記用紙を時計回りに回します。
そして、受け取った清記用紙の中に気に入る俳句があったら、先ほどと同様に、用紙番号とともにその句をノートや下書き用紙などに書き出します。
このような作業を繰り返し、全ての清記用紙が一周して、自分の書いたものが自分の手元の戻ってきたら、幹事さんは全ての清記用紙を回収します。
そして参加者は、ノートや下書き用紙に書き出したお気に入りの俳句の中から、特に良いと思える作品を、決められた数だけ選んで、用紙番号の若い方から順に並べて選句用紙に書き入れます。
選句用紙には、選句者名、すなわち自分の姓号(名前)と、選んだ俳句、および、その用紙番号を書く欄が設けてありますので、もれなく記入します。
繰り返しになりますが、ここで自分の作った俳句を選んではいけません。
すべて、他の人の作った俳句の中から選びます。
なお、一人ひとりの参加者が選ぶ句の数は、一人あたりの投句数の倍くらいが適当だと思われます。
つまり参加者一人の投句数が三句の句会なら、選句数は六句程度が妥当でしょう。
ところで、自分の投句した句の書かれた清記用紙が自分の手元へ回ってきたときに、もしその句に誤字などがあれば、そこで訂正を加えてください。
訂正は、どこをどう訂正したのかわかるように、赤ペンなどで行うとよいでしょう。
訂正個所については、全ての清記用紙を回収したあと、幹事さんが参加者全員の前で発表します。
■ 披講(ひこう)
参加者全員が選句を終えたら、幹事さんは選句用紙を回収して、披講者(読み手)に手渡します。
披講とは、選句用紙に書かれた句を皆の前で読みあげることで、声の良い人などが披講者となります。
披講者は、@披講者自身の選句、A一般参加者の選句、B主宰者の選句の順に、選ばれた句を披講していきます。
披講にあたっては、選者名、俳句に添えられた用紙番号、俳句が読み上げられます。
次にような具合に…
「凡茶さん選。1番、新じゃがや野風の先の田舎富士。3番、木に登りヨットの恋を眺めけり。6番…」
そして、この披講の際に、自分の投句した俳句が読み上げられた時は、大きな声で、自らの俳号(名前)を名乗ります。
優れた句は、何度も読み上げられるので、その都度、晴れがましい気持ちで、俳号(名前)を名乗ります。
俳人は、この披講の際に一回でも多く自分の号(名前)を名乗れるように、研鑽を積みます。
なお、幹事さんは、披講の際には、先に集めた選句用紙に、「正」の字などで、得票数を書き入れていきます。
その句会で生まれた佳句を、あとで見てすぐにわかるようにするためです。
■ 選評
披講が済むと、そこからは主宰による選評の時間となります。
主宰者は、投句された一つ一つの句に対し、評や助言を与えます。
自分の句があまり選ばれなかった時は、大人であっても素直な気持ちで評価を聞くことができなくなるものですが、ここはしっかりと主宰の言葉に耳を傾け、今後の俳句作りに生かしていくことが必要です。
なお、少人数の句会の場合は、主宰による選評のあとに、参加者相互の意見交換が行われることもあります。
自他の作品について楽しく語らい、これからの励みにしましょう。
以上、句会の方法(進め方)を丁寧に述べてきましたが、俳句結社ごとに少しずつ異なるので、まずは自分が所属する結社の句会の流れを早めに把握しましょう。
また、これから職場や学校などに趣味の俳句サークルを立ち上げる方は、参考にして、より楽しい句会の形式を作り上げていってください。
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さて、俳句には、読者の心に響く美しい形というものがいくつか存在します。
例えば、次の名句は、いずれも中七の後ろを「けり」で切り、座五に名詞を据える形をしています。
●凩(こがらし)の果(はて)はありけり海の音(言水)
●ひた急ぐ犬に会ひけり木の芽道(中村草田男)
また、次の名句は、いずれも名詞で上五の後ろを切り、句末は活用語の終止形で結ぶ形をしています。
●芋の露連山影を正しうす(飯田蛇笏)
●秋の暮大魚の骨を海が引く(西東三鬼)
筆者(凡茶)も、名句の鑑賞を通じて、このような美しい俳句の形を使いこなせるようになることで、次のような自信作を詠むことができました。
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私は退職を機に、アウトドア以外の趣味を持ちたいと俳句の通信教育を受講後、地元の小さな俳句会に加入させて頂き5年ほど経過しています。
入会した時の句会の進め方は、ご紹介いただいた方法とまったく同じでした。
伝統的な方法だったのを知らぬが仏です。
1人7句投句することもあり、清記までに時間を要し、選評などの時間が短かったため、パソコンを活用する改善提案をしました。先輩たちがよくぞ賛成して頂いたと思います。
@事前に会員はメールまたはファクスで投句Aプログラムに入力すると選句表が自動的にでき、会員に送付B句会で選句表を提出C選句結果をプログラムに入力すると、各会員が選句した一覧表、各句の得点表、作品集(背景に季節の画像を)が自動的に作成されます。これによって選評などの時間が長く取れるようになりました。
サラリーマン時代の効率化の習慣で、伝統的な俳句の変えてしまったのは良かったかと改めて考えています。
コメントありがとうございました。
新時代の句会の形式、興味深く拝見しました。
時には昔ながらの伝統的な句会を楽しみ、
時には進化した新時代の句会を楽しむ。
不易と流行。
どんどん俳句の世界が広がり、
面白くなっていきますね。