この原則を「有季定型」と言います。
季語が有り、五・七・五音の定まった型をしている詩こそが、俳句であるというわけです。
では、なぜ、俳句は有季定型で作られるようになったのでしょうか?
これを理解していただくために、ごくごく簡単ですが、俳句のルーツを知っていただきたいと思います。
■ 俳諧の連歌(はいかいのれんが)
人間の祖先がサルであるように、俳句にも祖先があります。
それが室町時代末期から江戸時代にかけて行われていた「俳諧の連歌」です。
俳諧は元来、たわむれ、おどけの意を表す言葉で、俳諧の連歌とは、「従来の連歌のように格式張らず、世俗的な言葉も使って楽しむ連歌」でありました。
松尾芭蕉も、与謝蕪村も、小林一茶も、俳諧の連歌を生業とする俳諧師でありました。
だから、彼らを、すぐれた「俳句」を作った人と形容するのは、本当は正確さに欠くのです。
さて、この俳諧の連歌とは、次のような遊びでした。
まず、誰かが五・七・五音の句(長句)を詠みます。
この第一句目を発句(ほっく)と言います。
この発句を踏まえて、別のだれかが七・七音の句(短句)を付けます。
この第二句目を脇と言います。
次にこの脇に付く長句を、誰かが第三句目として詠みます。
このように長句と短句を交互に詠んでいき、三十六句目まで続けます。
これが俳諧の連歌です。
なんとも楽しそうな遊びですね。
なお、最後の三十六句目は、挙句(あげく)と言います。
今でもよく用いられる「挙げ句の果て」という慣用句は、ここから来ています。
■ 発句は時候の挨拶(あいさつ)
この俳諧の連歌には、いくつか決まりごとがあったのですが、一番最初に詠まれる発句には、時候の挨拶がわりにその時々の季語を入れるのが習いでした。
そう、この季語を入れて詠んだ「俳諧の連歌の発句」こそが、現代の俳句の直接の祖先なのです!
芭蕉も蕪村も一茶も、俳諧の連歌を楽しむ中で、この発句作りには特に力を入れていました。
■ 俳諧の連歌から俳句へ
明治時代、「柿食へば鐘が鳴るなり法隆寺」の名句で知られる正岡子規は、複数人で行う俳諧の連歌を否定しました。
そして、季語を入れ五・七・五音で詠む従来の「俳諧の連歌の発句」を、新たに「俳句」として一人立ちさせ、個人で創作できる文芸へと変えることに成功しました。
ここに、有季定型で作る「俳句」が誕生したわけです。
俳句が有季定型で作られるようになったのには、このような歴史的背景があるのです。
≪おすすめ・俳句の本≫
佳句が生まれる「俳句の形」 凡茶
==============================
■ 当サイトの筆者が執筆した本です!
■ 電子書籍(Kindle本)と製本版(紙の本)から選べます!
上の商品リンクのうち、左が電子書籍(Kindle本)のものです。廉価な商品となっており、購入・ダウンロード後、ただちにお読みいただけるというメリットがあります。Kindle本については、下で説明します。
上の商品リンクのうち、右が製本版(紙の本)のものです。「やっぱり本は、紙のページをめくりながら読みたいなあ…」という方のために用意させていただきました。
オンデマンド (ペーパーバック)という、注文ごとに印刷・製本されるタイプの本です。
いずれかをクリックすると、本著の詳しい内容紹介や目次を見られるAmazonのページが開くので、気軽に訪れてみて下さい。
さて、俳句には、読者の心に響く美しい形というものがいくつか存在します。
例えば、次の名句は、いずれも中七の後ろを「けり」で切り、座五に名詞を据える形をしています。
●凩(こがらし)の果(はて)はありけり海の音(言水)
●ひた急ぐ犬に会ひけり木の芽道(中村草田男)
また、次の名句は、いずれも名詞で上五の後ろを切り、句末は活用語の終止形で結ぶ形をしています。
●芋の露連山影を正しうす(飯田蛇笏)
●秋の暮大魚の骨を海が引く(西東三鬼)
筆者(凡茶)も、名句の鑑賞を通じて、このような美しい俳句の形を使いこなせるようになることで、次のような自信作を詠むことができました。
●糸取りの祖母逝きにけり雪解雨(凡茶)
●露の玉工場ドスンと始まりぬ(凡茶)
この本は、こうした佳句の生まれやすい美しい俳句の形を、読者の皆様に習得していただくことを目的としています。
なお、この本は、前著『書いて覚える俳句の形 縦書き版/横書き版』(既に販売終了)を、書き込み型テキストから「純粋な読み物」に改め、気軽に楽しめる形に書き変えて上梓したものです。
あちこち加筆・修正はしてあるものの、内容は重複する部分が多いので、すでに前著『書いて覚える俳句の形』をお持ちの方は、本著の新たな購入に際しては慎重に検討してください。
●Kindle本について
Kindle(キンドル)本とは、Amazonで購入できる電子書籍のことです。
パソコン・スマホ・タブレットなどに無料でダウンロードできるKindleアプリを使って読むことができます。
あるいは、紙のように読めて目に優しく、使い勝手も良い、Kindle専用の電子書籍リーダーで、快適に読むことも出来ます。
新版20週俳句入門 藤田湘子著
==============================
■ どこに出しても恥ずかしくない俳句を詠めるようになる本です
昭和63年に出された旧版『20週俳句入門』があまりにも優れた俳句の指導書であったため、平成22年に改めて出版されたのが、この『新版20週俳句入門』です。
この本は、
〔型・その1〕 季語(名詞)や/中七/名詞
〔型・その2〕 上五/〜や/季語(名詞)
〔型・その3〕 上五/中七/季語(名詞)かな
〔型・その4〕 季語/中七/動詞+けり
の4つの型を、俳句を上達させる基本の型として、徹底的に読者に指導してくれます。
これらをしっかり身につけると、どこに出しても恥ずかしくない俳句を詠めるようになるでしょう。
王道の俳句を目指す人も、型にとらわれない斬新な俳句を目指す人も、一度は読んでおきたい名著です。
俳句の作り方 〜初心者入門と季語・切れ字の使い方〜
●● トップページへ ●●
姉妹サイト 「季語めぐり 〜俳句歳時記〜」へ
【入門 〜俳句の作り方〜の最新記事】